五月の晴れた日
傘をさし長靴はいて
逃げ出す人々満載の電車を待っていると
確か中学の同級生のB君が
魚の帽子をかぶって笑いながら話し掛けて来た。

「ねえ君も逃げちゃうのかい?」
って笑いながら聞くから
「君は逃げないの?」
って聞いたら
「僕はもう逃げちゃったんだよ」
と水の中でしゃべるようにガボガボ笑って
人込みの中を泳ぐように消えていった。

次第に大きくなるサイレンを聞きながら

そおいえば去年彼は海で行方不明になったんだった...
と思い出した。


090507